もし、もう一度やり直せたら②

「俺たち、もう無理だと思うんだよね。」
 

遼の言葉が理解できなかった。

 

オレタチ、モウムリダトオモウンダヨネ…?

 

「3年も一緒に居て、電話で終わらせたくなかったけど…もう別れよう。飲み会責めたのも、うんざりさせたのもごめんな。今までありがと。」
 

電話が切れる音がした。

 

音のしなくなったスマホを耳に押し付けたまま、家に着いた。
 

そのままベッドに倒れこんだら、涙がとめどなく溢れてきた。

 

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いつも、手遅れになってから気が付くことが多かった。

 

昨日の出来事を頭の中で繰り返しながら、夏希はつま先で砂を押し潰した。
 

靴の下で、砂粒がメリメリと音をたてる。

 

もし、もう一度やり直せたら、絶対にあんなこと言わなかったのに…

 

ぼんやりと地面を見つめていると、いつの間にか現れた黒猫が夏希の足にすり寄ってきた。
 

「黒猫って、不幸になるんだっけ。」
 

ふと、そんなことを口に出してみたら、黒猫が顔をあげた。
 

責めるような、黒い瞳と目が合う。

 

「不幸になったのは御自分のせいでしょう。」

 

突然、猫が喋った。

 


猫が、喋った…?
 

慌ててブランコを引いたけど、逃げられない。

 

「皆さん、揃いも揃って同じ反応をしますよね。まあいいんですけど。それより、あなたずっとやり直したいって考えていたでしょう?」
 

猫が、すくっと立ち上がる。

 

「一度だけ、やり直させてあげましょうか?」

 

吸い込まれてしまいそうな深い瞳が、夏希をじっと見つめた。
 

「…。」
 

なにも言葉が返せない。
 

猫があくびをした。
 

「貴方以外にもね、沢山待ってる人がいるんですよ。早くお返事頂けないと次の人に…

 

「や、やり直します!」
 

相手は猫だ。

 

でも、もしもう一度チャンスをもらえるなら、猫の手を借りてでもやり直したい。

 

そしたら絶対に遼を傷つけるようなことは言わないし、振られるようなマネはしない。昨日、後悔したことを全部やり直したい。

 

猫がニタァッと笑った。

 

「それでは、やり直させてあげましょう。すべて、貴方次第。」

 

急に目の前で火花が散ったかと思うと、夏希は大学の図書館に居た。